来自北東、昴宿星団

北東より来たれ、プレアデス

ハルバースタムのトルーマン評

ハルバースタムは概してトルーマンに好意的である。印象的なものを一部抜粋する。

引用

顧問のなかには努めてルーズヴェルト風に話し、演説は会話調にするよう助言する者もいたが、トルーマンは賢明にもそれは間違った道で巨匠の真似ごとはできないことを知っていた。トルーマンにできることは、ただトルーマン自身になり切ること、アメリカ国民はトルーマンにないものでトルーマンを判断しないでほしいと望んだ。

デイヴィッド・ハルバースタム. ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(上) (Japanese Edition) (Kindle の位置No.4609-4612). Kindle 版.

トルーマンホワイトハウスで成功を収めた理由の一つは、彼が平然と楽しげにハリー・トルーマンその人の姿をさらけ出していたからであった。彼は見たままの彼であった。彼は欠陥を攻撃されても、それはむしろ栄光ですらあった。その欠陥は、ごく普通の人間ならだれでももっている欠陥だったからである。彼は自分の限界も資産とした。アメリカ人はトルーマンと彼の行動に安心してついていくことができた。

デイヴィッド・ハルバースタム著 浅野輔訳『ベスト&ブライテスト〔下〕』二玄社 2015(2009) (p.42)

トルーマンの人生観や歩んできた道のりには、どこかしらあっけらかんとした雰囲気がある。
内なる懐疑などといった代物に悩むことはなかった。具体的な証拠を見、側近の忠告に耳を傾けると、即座に明快な決断を下した。いったん決断したのちは、振り返ることはなかった。あれこれと反省するタイプではなかった。政治は可能性の技術だと見切っていた。ポーカーのテーブルについたら、配られた手札で最善を尽くせばいい。あとはぐっすり眠るだけだ。

デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・フィフティーズ 第1部 1950年代アメリカの光と影』新潮社 2002 (p.51)


決して華美ではない、質実剛健トルーマンの英邁さをよく示している。